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身元引受人とは。施設に入るときに求められることと、いないときの代わり

2026年8月10日時点の情報です。

頼める家族がいなくても、施設に入る道はあります。ただし、ひとりで施設を回って交渉するやり方では、入所の話はなかなか進みません。実際に入所できた例に共通するのは、地域包括支援センターやケアマネジャーが間に入り、段取りを整えてから、受け入れる施設を探していることです。

身元引受人とは

施設に入るとき、入居の契約書には本人のほかに、もう一人署名する欄があります。

入居契約書の再現図。本人の欄のほかに身元引受人の欄があり、そこに利用料の連帯保証・退去時の対応・荷物と遺体の引き取りが求められる。別の形で用意して施設に相談できる

この欄の呼び名は施設によって違います。身元引受人、身元保証人、連帯保証人。名前が違っても、求められる中身はこの3つです。

身元引受人には、誰がなれる?

条件は施設ごとに決まっています。書式で多いのは「本人とは別に生計を営む成年の方」という線引きで、親族に限る施設もあれば、条件を満たせば親族以外でもよい施設もあります。引き受ける人の収入を確認する施設もあります。

身元引受人を、あとから別の人に変更することもできます。引き受けた人が亡くなったり事情が変わったりしたときも、施設に相談できます。

書ける人がいないと、どうなるのか

ほぼすべての施設が求めます。全国2,387の施設が回答した調査では、入居の契約で本人以外の署名を求める施設は95.9%でした。施設の種類ごとに見ると、養護老人ホームを除いてどれも99%前後です。断られたとしても、その施設が特別に厳しいわけではありません。

入居の契約で本人以外の署名を求める施設の割合。特別養護老人ホーム99.4%、老人保健施設99.1%、グループホーム99.4%、有料老人ホーム99.3%、軽費老人ホーム97.6%、養護老人ホーム80.0%

では、書ける人がいないと言ったらどうなるか。同じ調査で施設が答えた対応がこれです。

書ける人がいないと言ったとき施設はどうしたか。条件を満たせば受け入れる34%、そのまま受け入れる13%、決めていない20%、そのままでは受け入れない31%。施設が挙げた条件は成年後見制度を使う、市区町村に相談する、民間の身元保証会社と契約する

条件付きも含めれば、受け入れると答えた施設が約半分です。施設が挙げた条件は、成年後見制度を使うこと、市区町村に相談すること、民間の身元保証会社と契約すること。預り金のような前払いを挙げた施設はごくわずかで、求められているのはお金を積むことではなく、本人を支える体制です。

一方で、「そのままでは受け入れない」と答えた施設も3割あります。「頼める人がいないなら難しい」と言う施設は実際に残っていて、そこで粘るより、受け入れる側の施設を支援者と一緒に探すほうが早く決まります。いま入院中の方は、病棟の看護師に「退院支援の相談をしたい」と伝えると、医療ソーシャルワーカーにつながります。

施設で相談するのは、特別養護老人ホームでは生活相談員、老人保健施設では支援相談員という職員です。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は施設ごとに入居の条件が違うので、相談に応じる施設を最初から探すほうが早く進みます。資力が限られる場合の養護老人ホームは、施設ではなく市区町村が入所を決めます。

施設が言う「条件」とは、何のことか

施設が確かめたいのは、支払い・連絡と手続き・引き取りを引き受ける人がいる状態かどうかです。誰がそれを引き受けるかで、3つに分かれます。

成年後見制度を使う

引き受けるのは、家庭裁判所が選んだ人です。弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職か、親族が選ばれ、本人に代わって契約やお金の管理をします。

調べると「後見人は保証人にはなれない」と出てきます。それは本当で、本人のお金を守る立場の人が、支払いを肩代わりする保証人を兼ねると立場がぶつかるためです。それでも施設が条件に挙げるのは、施設が困る場面のほとんどを、後見人がカバーするからです。契約の締結、利用料の支払い、退院や退去のときの手続き、亡くなったあとの費用の精算や火葬・埋葬の契約まで、後見人の仕事に含まれます。

市区町村に相談する

引き受けるのは、行政と地域の関係者です。お金の管理は社会福祉協議会(日常生活自立支援事業)、日ごろの連絡と見守りは地域包括支援センターや民生委員、というように役割を分け合います。地域包括支援センターに相談すると、行政・社協・民生委員などが集まって誰が何を持つかを決める会議(地域ケア会議)を開いてもらえる地域もあります。国の事例集には、この形で保証人を立てないまま入所した実例が載っています。

民間の身元保証会社と契約する

引き受けるのは、契約した会社です。3つのうち唯一、入居の契約書の欄に署名してもらえる方法なので、申し込みの書類はそのまま埋まります。施設から見れば連絡先も支払いの保証先も決まるので、多くの施設で入居の審査に進めます。身元保証会社ではなく、弁護士や司法書士と個別に契約して同じ役割を頼む形もあります。

自分の場合、どこから始めるか

どちらの道も、相談から始まります。違うのは相談する相手です。ほとんどの人は、公的な相談先から始めています。

公的な相談先に相談する

入口は地域包括支援センターです。高齢者の相談を無料で受ける公的な相談先で、どの市区町村にもあります。「お住まいの市区町村名+地域包括支援センター」で検索すると連絡先が出てきます。介護保険をまだ使っていない段階でも相談できて、要介護認定の申請もここで受け付けています。施設を探し始める前の、「いずれ入るとしたら何が要るのか」という段階の相談も受けています。すでに要介護・要支援の認定を受けて担当のケアマネジャーが付いている方は、ケアマネジャーに相談するのが早道です。

成年後見制度を使う場合

ここで相談できます。申し立て先は家庭裁判所ですが、その前の相談と、頼れる親族がいない場合の市区町村長申立ての手配は、市区町村の高齢者福祉の担当課と地域包括支援センターが担当します。選ばれるまでには数か月かかり、専門職が就いた場合は本人の財産から報酬(月2万円前後が目安)を払います。

後見人を付けないで進む場合

お金の管理は社会福祉協議会、日ごろの連絡と見守りは地域包括支援センターや民生委員、というように、関わる人たちで役割を分け合う組み立てです。資力が限られる場合は、市区町村の決定で入る養護老人ホームが候補になり、生活保護を受けている方・これから申請する方は、福祉事務所のケースワーカーが施設探しに関わります。

亡くなったあとのこと

この道では別に決めておく必要があります。後見人が付いても火葬や埋葬の契約までで、葬儀の手配や荷物の整理は含まれないためです。死後事務委任(亡くなったあとの手続きを生前に頼んでおく契約)を、司法書士・行政書士などの専門職や民間の会社と結んでおけます。

どれを選ぶかを自分で決めてから相談する必要はありません。頼める家族がいないことを伝えれば、相談を受けた人が使えるものを組み合わせます。

民間の会社に問い合わせる

民間の身元保証会社に、自分で問い合わせる道です。面談で話を聞いて契約すれば、入居の契約書の欄はそのまま埋まり、施設に申し込めます。公的な相談先の順番を待たずに、すぐ申し込めるのが違いです。かかるお金は30万〜70万円が目安で、別に入会金や預け金がかかる会社が多くあります。施設が特定の会社と提携していて、その提携先との契約が入居の前提になっている例もあります。会社ごとの料金と条件は大きく違います。

預けたお金の管理のしかたは、契約する会社によって違います。その会社の口座に入る形と、信託銀行など第三者に預ける形があり、その会社が倒産したときの扱いが変わります。途中でやめたときの返金も契約する会社によって違い、入会金や契約金を返さない契約もあります。どちらも契約前の面談で確かめられて、答えは書面でもらえます。

亡くなったあとの荷物の引き取りや葬儀・納骨まで引き受けるプランもありますが、多くは身元保証とは別の契約(死後事務委任)で、料金も別です。どこまで含むかは、契約する会社によって違います。

この道を選ぶ場合も、施設探しそのものは地域包括支援センターやケアマネジャーが間に入っている例のほうが決まっています。契約を先に済ませてから相談しても遅くはありません。

よくある心配ごと

疎遠な甥や姪に、頼むしかない?

頼まなくても、このページの3つの方法で用意できます。むしろ頼む場合のほうに注意が要ります。頼まれた側には「引き取りまで全部背負わされるのでは」という不安が生まれやすく、それが原因で断られた例が実際にあるためです。

それでも頼める関係なら、「緊急連絡先としてだけ」のように役割を限定して頼む方法があります。連絡先に親族の名前がひとつあるだけで、施設側が入居の相談を進めやすくなることもあります。お金の保証まで引き受けてもらう場合は、上限額を先に確認してみてください。入居の契約書に「極度額」として書かれる金額がそれで、月額費用の6〜10か月分を目安にする施設が多くあります。

入居したあとで、身元引受人がいなくなったら退去?

特別養護老人ホームや老人保健施設では、身元引受人がいないことだけを理由に入所を断ることも、退所を求めることも不適切、と国の通知にあります。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は契約で決まるので、該当する条項がどうなっているかを契約の前に確認してみてください。

断られた。どこに相談すればいい?

まず、断られた施設で粘るより、相談に応じる施設に切り替えるほうが早く決まることが多いです。切り替え先は、地域包括支援センターかケアマネジャーに「断られた事情ごと」相談して探します。そのうえで、特別養護老人ホームなどの介護保険施設に「身元引受人がいないから」とだけ言われた場合は、国の通知に反する扱いなので、市区町村の介護保険の窓口に伝える道もあります。

施設に入れたら、入院のときも安心?

別の話です。施設の身元引受人と、病院の入院時の保証人は別枠で、入院のたびに同じ問題が起きます。民間の身元保証会社と契約する場合、入院時の対応(手続き・駆けつけ)が契約に含まれるかは、契約する会社によって違います。入院のときの動き方は入院の保証人がいないときにまとめてあります。

頼める家族がいない人の入所は、めずらしくありません

身元引受人を頼める家族がいないまま施設に入った人は、実際にいます。特別養護老人ホームに一度断られたあと、保佐人を選任して別の特別養護老人ホームに入った人もいます。施設側の回答でも、書ける人がいないと言われたあとに受け入れると答えた施設は、条件付きを含めて約半分でした。

相談にお金はかかりません。地域包括支援センターはどの市区町村にもあり、ケアマネジャーへの相談も無料です。断られた施設のことも、お金の不安も、相談の材料として扱われます。

決まるまでには時間がかかります。成年後見の申し立てなら数か月、施設探しも一度で決まるとはかぎりません。

地域包括支援センターやケアマネジャーは、同じ相談を日常的に受けています。頼める家族がいないことを伝えれば、相談を受けた人が事情を聞き取り、どの施設を当たるかまで一緒に考えます。今回だめだったときも、次の施設を探すところから相談できます。

民間の身元保証会社を選ぶ場合は、会社選びから始まります。

出典

  • ・みずほ情報総研「身元保証等高齢者サポート事業に関する調査」(平成29年度・厚生労働省委託)
  • ・厚生労働省 老健局通知(平成30年8月30日・老高発0830第1号/令和7年7月30日改正)
  • ・各施設が公開している入居契約書・重要事項説明書