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死後事務委任契約とは。費用と、頼める相手

2026年8月13日時点の情報です。

頼める人がいなくても、そのまま放っておかれることはありません。引き取る人がいない場合は、亡くなった場所の市区町村が最後まで対応すると法律で決まっています。ただし、行われるのは必要最小限のことだけです。葬儀をしてほしい。決めているお墓に入りたい。部屋の荷物をこうしてほしい。この人には知らせてほしい。そうした希望があるなら、生きているうちに頼む相手を決めて、契約にしておく必要があります。

亡くなったあとのことを誰にも頼まないと、どうなるか

身寄りのない方が亡くなったあと、何が行われるかは法律で決まっています。

誰にも頼まないまま亡くなると、市区町村が火葬を行うが葬儀はない。遺骨は自治体が数年預かったあと合祀される。部屋は相続人が分からないと解約も片づけもできない。財産は火葬費用にあてられ、残りは相続人か国のものになる

火葬はされるが、葬儀はない

引き取る人がいないときは、亡くなった場所の市区町村長が火葬を行うと、法律で決まっています。生活保護を受けていた方の場合は、生活保護から葬祭の費用が出ます。どちらも、医師による死亡の確認、遺体の運搬、火葬、納骨までで、通夜や告別式は含まれません。

遺骨は、数年後に他の方と一緒に納められる

火葬のあと、遺骨は引き取りに来る方に備えて市区町村が保管します。保管する期間は自治体によって1年未満から10年以上まで幅があり、いちばん多いのは5年です。期間が過ぎると、骨壺から出して他の方の遺骨と一緒に納められます。どこに納まるかを本人が選ぶことはできません。

部屋は、片づけられないまま残る

賃貸住宅の契約は、亡くなると、財産を引き継ぐ人(相続人)に引き継がれます。相続人が誰か分からなかったり、連絡がつかなかったりすると、大家は契約を終わらせることも、部屋の荷物を処分することもできません。

お金は、火葬の費用にあてられる

持っていた現金や預金は、まず火葬などの費用にあてられます。足りないときは、相続人や、法律上あなたを扶養する義務がある人(親や子などの直系の家族と、きょうだい)に、その分の負担を求めることがあります。残したお金で足りていれば、その必要はありません。

かかったお金を払って残った分は、相続人に渡ります。相続人がいない場合は国に納められます。誰かに渡したい人がいるなら、遺言を書いておくことになります。

ここまでは、亡くなったことに誰かが気づいた場合の話です。ひとり暮らしの場合、気づいてもらう仕組みは別に用意することになります。市区町村の緊急通報や民間の見守りサービスの使い方は、孤独死を防ぐ見守りにまとめています。

亡くなったあとの手続きを頼んでおく契約が、死後事務委任です

亡くなったあとの手続きを、生きているうちに誰かに頼んでおく契約です。葬儀や火葬をどうするか、遺骨をどこに納めるか、部屋の荷物をどうするか、誰に知らせるか。引き受けた人が、そのとおりにします。

任せられるのは、亡くなったあとに誰かがやらなければならない用事です。葬儀と火葬の手配。遺骨をお墓や納骨堂に納めること。入院していた病院や、入っていた介護施設に残った支払い。市区町村への届け出。部屋の荷物の片づけ。知らせてほしい人への連絡。ふだんなら家族がしていることを、引き受けた人がします。

どこまで任せるかは、自分で決められます。葬儀だけを頼むこともできますし、部屋の片づけまでまとめて頼むこともできます。

死後事務委任契約とは、家族がやることを引き受ける人を決めておく契約。葬儀・火葬、お墓に納める、病院や施設の支払い、部屋の片づけ、知らせたい人への連絡、役所への届け出。家族がいる人は家族が行い、ひとりの人は頼んだ相手が行う

遺言とは別のものです

遺言で決められるのは、財産を誰に渡すかなど、法律で定められた事柄です。葬儀やお墓の希望を書くことはできますが、そのとおりにする義務は誰にも生じません。

死後事務委任契約は、その希望を引き受ける人を決めるものです。財産を渡したい人がいるなら遺言、やってほしいことがあるなら死後事務委任と、役目が分かれています。両方を作る方もいます。

生きている間のことは、この契約に入りません

この契約が働き始めるのは、亡くなったあとです。入院するときの保証人、介護施設に入るときの手続き、判断ができなくなったときのお金の管理は、それぞれ別の契約になります。

民間の会社は、これらをまとめて一つの契約にしていることが多くあります。その場合、自分がいま必要としているのはどの部分かを分けて見ると、金額の意味が分かります。

死後事務委任は、誰に頼めるか

頼む相手に、資格の決まりはありません。親しい知人や、遠い親族に頼むこともできます。ただし、自分より長く元気でいて、役所や葬儀社とのやり取りを引き受けられる相手である必要があります。頼まれた側の負担も小さくありません。そのため実際には、次の3つのどれかを選ぶ方がほとんどです。

司法書士・行政書士・弁護士

個人の専門職に直接頼む形です。値段は項目ごとに積み上げる事務所が多く、頼む範囲を自分で決められます。

探すときは、地域の司法書士会・行政書士会・弁護士会が開いている住民向けの相談窓口から入れます。司法書士会の相談センターは全国に約150か所あります。相談は予約制のところが多く、相談料は相談先によって違います。

民間の会社

身元保証とまとめて契約する形が多く、見守りや入院時の対応まで一つの契約に入っていることがあります。引き受けた会社が続くかぎり、担当が代わっても引き継がれます。会社ごとの値段と条件は大きく違うので、複数に問い合わせて比べてみてください。

預けたお金の管理、途中でやめたときの返金、頼んだとおりにやったかを誰が確かめるか。これらは引き受ける会社によって違います。

自治体の事業

収入や資産が限られる方を対象に、自治体が葬儀社との生前契約を仲立ちする事業を持つ地域があります。横須賀市のエンディングプラン・サポート事業が知られていて、同じような事業を始める自治体が増えています。

対象になる条件も、この取り組みがあるかどうかも自治体によって違います。お住まいの地域にあるかどうかは、市区町村の高齢者福祉の担当課か、地域包括支援センターで確認してみてください。

死後事務委任は、いくらかかるのか

用意しておく額は、おおよそ100万円です。頼む相手に払う委任料が50万円ほど、葬儀や火葬の実費が50万円ほど。通夜や告別式をせず火葬だけにする場合の目安です。

引き受ける会社によって案内される金額が大きく違うのは、この2つに加えて、先に預けるお金まで「総額」に含めていることがあるためです。その金額に何が含まれているのかを、分けて確認してみてください。

死後事務委任にかかるお金。委任料が20万〜100万円、公証役場に払う手数料が6,500円〜数万円。これとは別に要るお金として、葬儀や火葬に実際にかかるお金が20万〜40万円、先に預けておくお金が0〜150万円。総額いくらの差の大半は、預けるお金の違い

委任料

葬儀の手配や役所への届け出をしてもらうことへの料金です。目安は50万円ほど。安いところは20万円台、頼む範囲が広いと100万円を超えます。

この差は、頼む範囲の差です。決め方には、1件ごとに値段が決まっている形と、まとめていくらと決めている形があります。1件ごとの形は、頼む項目を減らせばその分安くなります。

民間の会社は、見守りや入院時の対応とまとめて一括の料金にしていることが多く、死後事務の分だけを取り出せないことがあります。自治体の事業は、葬儀社に払うお金が中心です。

公証役場に払う手数料

死後事務委任の契約書は、公証役場という役所で作ってもらう形がよく使われます。そうしてできたものを公正証書といい、原本が公証役場に残ります。手数料は死後事務委任契約で6,500円が基本で、写しの交付に別途かかります。公証役場の担当者に出向いてもらう場合は、日当と交通費が加わります。

専門職のウェブサイトには11,000円と書かれているものがありますが、これは2025年10月の改定前の金額です。

死後事務委任とは別に、葬儀や火葬の実費がかかります

葬儀社や火葬場に実際に払うお金です。委任料とは別に、誰に頼んでもこの分は残ります。

どんな見送り方にするかで変わります。通夜や告別式をせず火葬だけにするなら50万円ほど、身内だけで式を行うなら100万円ほど、通夜と告別式を行うなら120万円ほどです。

死後事務委任は、どうやって頼むのか

頼む相手は自分で選べます。連絡してから契約書ができるまでに、順に決めていくことがあります。

何から始めるか

電話か、ウェブサイトの問い合わせから始まります。相談を無料にしているところが多くあります。出向くのが難しい場合、自宅を訪問して話を聞く事務所や会社もあります。

聞かれるのは、葬儀はしてほしいか、お墓はどこか、部屋の荷物はどうしたいか、知らせてほしい人は誰か。あわせて、家族や親族がいるか、財産がどのくらいあるかも聞かれます。亡くなったあとに連絡が行く相手であり、お金の話が行く相手でもあるためです。

そのあと、戸籍をたどって相続人にあたる人を確かめる会社もあります。戸籍は本人か、委任状を持った人でないと取り寄せられないので、頼んでいないのに身辺を調べられることはありません。

契約の前に、何をもらえるか

頼む中身が固まると、死後事務委任の契約書の案と見積もりが出てきます。あわせて重要事項説明書という書面をもらえます。持ち帰って読めます。

この書面に書かれることは決まっています。何をしてもらえて、いくらかかるのか。入会金や、先に預けるお金の内訳。いつ、どうやって払うのか。頼んだことがされたかの確かめ方。判断ができなくなったときや、入院したときの対応。そして、途中でやめたときの返金です。

お金は、いつ払うのか

契約のときです。先に預ける方式なら、葬儀の実費まで含めてこの段階でまとめて預けます。まとまったお金を払うのは、ここです。

預からない事務所もあります。その場合は、亡くなったあとに残ったお金から支払いを済ませます。

預ける場合、そのお金の置き場所は死後事務委任の契約書に書いてあります。その会社が倒産したときに、扱いが変わります。預かった会社の口座に入っていれば、その会社の財産と一緒に扱われ、信託会社や別口座に分けてあれば、預かった会社の財産とは分けて管理されます。置き場所の書き方は3通りあります。

死後事務委任契約書の見本。甲は本人、乙は頼んだ相手。第1条に委任する事務の一覧、第2条に葬儀を行う会館と費用の上限、第3条に納骨する寺、第4条に預ける金額と分別して管理する定め、第5条に一年ごとの報告と事務を終えたあとの報告先、第6条に本人が死亡しても契約が終了しないこと、第7条に生存中はいつでも解除できることと預託金の返還。見るところは、頼めるのは並んだ分だけであること、預けたお金の置き場所の3通りの書き方、亡くなったあとの報告先、やめたときに返るかどうか

死後事務委任の契約書は、どこに残るのか

作り方は2通りあります。頼む相手と二人だけで作る形と、公証役場で作ってもらう形です。公証役場で作ってもらうと、原本が公証役場に残ります。手元の分をなくしても内容が残るので、こちらがよく使われます。

公証役場とのやり取りは、頼む相手がします。頼む相手が案を作って公証役場に出し、公証役場がそれを公正証書の形に整えます。ただし、作る日は本人が行きます。公証役場が本人の意思を直接確かめる必要がある契約では、代わりの人が行くことは認められていないためです。持っていくのは、運転免許証などの身分証明書か、印鑑登録証明書。証明書は発行から3か月以内のものに限られます。

体調などで出向けないときは、公証役場の人が自宅や入院先まで来て作ることもできます。この場合、日当が1日2万円(4時間以内なら1万円)と、交通費が加わります。出向ける範囲は公証役場ごとに決まっているので、近くの公証役場に頼む形になります。

やめたくなったら、どうなるか

生きているあいだは、いつでも契約をやめられると書いてある契約書があります。預けたお金についても、契約が終わったら返すと定めてあるものがあります。

ただし、その定めがない契約書もあります。やめたときにいくら返るかは、契約書ごとに違います。その契約書ではどうなっているかを、契約の前に確認してみてください。

頼んだとおりにやってもらえたかを、誰が確かめるのか

頼んだことが行われるのは、自分が亡くなったあとです。頼んだ本人は確かめられません。そのため、確かめる方法を死後事務委任の契約書に書いておくことになっています。

生きているあいだの備えもあります。預かっているお金について1年ごとに報告すると定めた契約書があります。第三者が定期的に点検する仕組みを持つ会社もあります。どちらもない場合は、誰が確かめるのかを契約の前に聞いてみてください。

死後事務委任では対応できないこと

死後事務委任の契約書に書いても、そのままではやってもらえないものがあります。役所や携帯電話の会社に決まりがあるもの、お寺や大家と生きているうちに話を通しておかないと進まないもの。次の4つです。

死亡届は、任意後見も一緒に結んでいないと出せない

死亡届を出せる人は法律で決まっていて、死後事務だけを頼まれた人は入っていません。入っているのは、同居していた家族、家主や土地の管理人、後見人、そして任意後見を引き受けた人です。死後事務委任を任意後見の契約と一緒に結べば出せるので、一緒に結ばない場合は、誰が出すことになるのかを契約の前に確認してみてください。

携帯・SNS・公共料金の解約は、相続人しかできない

携帯電話やインターネット、SNS、公共料金の解約は、その会社の決まりで相続人しかできないとされていることが多くあります。死後事務委任の契約書に並んでいても、携帯電話の会社の窓口で断られます。公共料金は、使わないまま基本料金だけが請求され、支払いが途絶えたところで供給が止められるのを待つほかない場合もあります。

そもそも、賃貸の解約や携帯電話の解約は、書いていない契約書のほうが多くあります。頼みたいことが入っているか、本当にできるのかを契約の前に確認してみてください。

お墓は、死後事務委任の契約書に書いただけでは入れない

家族がすでに入っているお墓に自分も入りたい場合、死後事務委任の契約書に納骨先を書くだけでは足りません。お墓を管理するお寺や霊園の承諾が要ります。多くの墓地には「使えるのは使用者とその親族」といった規則があり、それに当てはまるかどうかが問われるためです。生きているうちに寺や霊園へ伝えておくことについては、おひとりさまの葬儀と、継ぐ人がいないお墓にまとめています。

部屋の解約と片づけは、大家との取り決めが別に要る

60歳以上でひとり暮らしの方が部屋を借りるときは、亡くなったあとに契約を終わらせて荷物を引き取る役目を、誰かに頼んでおくよう求められることがあります。不動産会社はこの役目の人を「受任者」と呼びます。死後事務委任を頼む相手に、この役目もあわせて頼めます。保証人との違いや、頼める人がいないときの探し方は、高齢で賃貸を断られたらにまとめています。

よく聞かれること

疎遠な親族には、知らせたくない

誰に知らせて、誰に知らせないかは、死後事務委任契約で決めておけます。死後事務を頼んだ相手は、そこに書いたとおりに連絡します。

遺言書にも書けますが、そちらに強制力はありません。強制力があるのは、財産を誰に渡すかといった、法律で定められた事項だけです。なお、市区町村が火葬を行う場合は、かかったお金の負担を求めるために相続人を探すので、そこから連絡が行くことがあります。

料金が安い会社は、何が違う?

その金額に何が含まれているかが違います。葬儀や火葬の実費は誰に頼んでも要るので、委任料だけが安い場合は、実費を別に用意することになります。

先にお金を預ける方式かどうかでも変わります。預ける場合は、そのお金の置き場所と、頼んだとおりにやってもらえたかを誰が確かめるのかを、契約の前に確認してみてください。

公正証書にしないと無効だと言われた

公正証書にしなくても、契約は成立します。事業者向けの指針でも、公正証書までは求めていません。求められているのは、契約の中身を書面にして本人に渡すことです。

それでも公正証書にする利点はあります。原本が公証役場に残るので、手元の分をなくしても内容が分かり、あとから「そんな契約はしていない」と争われにくくなります。

死後事務を頼んだ相手が、自分より先に亡くなったら

民間の会社に頼む場合は、担当が代わっても、その会社が続くかぎり引き継がれます。個人の専門職に頼む場合は、誰が引き継ぐことになるのかを契約の前に確認してみてください。その定めを置いている例は多くありません。

まだ元気だが、早すぎないか

早すぎることはありません。判断能力があるうちに結ぶ契約なので、元気なときが結べるときです。頼む相手を探すところから始められます。

成年後見人がいれば、葬儀まで頼める?

成年後見人ができるのは、家庭裁判所の許可を得たうえで火葬か埋葬を頼むことと、たまっている支払いを済ませることまでです。葬儀はそこに入らないので、望む場合は死後事務委任契約で別に決めておくことになります。成年後見人とは、判断できなくなった人に代わってお金や契約を管理する人で、家庭裁判所が選びます。

ペットのことも頼めますか

引き取り先を先に決めておけば、その費用を含めて契約に入れられます。ペットについて書いてある契約書は多くないので、頼めるかどうかは相談のときに聞いてみてください。

出典

  • ・墓地、埋葬等に関する法律 第9条/民法653条・873条の2・959条/戸籍法87条
  • ・最高裁判所 平成4年9月22日判決(死後の事務を含む委任契約は、委任した人の死亡で終了しない)
  • ・日本公証人連合会(公証人手数料令・令和7年改定)
  • ・鎌倉新書「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年3月)
  • ・横須賀市エンディングプラン・サポート事業/東京都営瑞江葬儀所の料金
  • ・司法書士・行政書士の事務所、民間の事業者が公開している料金表