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任意後見制度とは。契約の結び方と、効力が出るとき

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任意後見は、判断が難しくなったときに備えて、自分で選んだ相手に、 あらかじめ決めた範囲のことを任せておく契約です。任せるのは、あなたの代わりに署名や押印をする場面です。 始まるのは契約した日ではなく、家庭裁判所が監督役を付けた日で、 誰かが申し立てないとその手続きは始まりません。

監督役が選ばれるまで、頼んだ相手には何の権限も渡りません

頼む相手を任意後見人といいます。 任意後見人が取り決めどおりに動いているかを見る役が、任意後見監督人です。 権限が渡るのは、家庭裁判所がこの監督役を付けた日からです。

監督役は、家庭裁判所が司法書士や弁護士の中から選びます。 自分で選んだ人を監督役にすることはできません。

それまでのあいだ、判断ができるうちは、あなたが自分で銀行に行き、自分で契約します。 頼んだ相手(任意後見人)が銀行の窓口に立てるのは、監督役が選ばれてからです。 そのときは登記の証明書を出して、自分にその役目があることを示します。 通帳と印鑑を持っていくだけでは応じてもらえません。

判断が難しくなったかどうかは、医師の診断書と、家庭裁判所の面談の2つで決まります。 面談では、家庭裁判所の職員が自宅や介護施設に来て、本人と話す形が多くなります。 認知症と診断されていても、受け答えができていれば、まだ始まらないこともあります。

いつ申し立てるかを見きわめるのは、見守りをしている頼んだ相手です。 早すぎると、自分でできることまで人の手を通すことになり、報酬を払う期間もその分長くなります。 遅すぎると、間に合いません。銀行の窓口で受け答えができなくなった時点で、 まとまったお金は引き出せなくなります。

申し立ててから監督役が選ばれるまでには、ふつう2か月ほどかかります。 その2か月のあいだ、介護施設の入居金も入院代も、口座から出せません。 2か月分は現金で手元に置いておくか、 頼んだ相手に立て替えてもらう取り決めを契約に入れておきます。

任意後見が動き出すまでの流れを縦に並べた図。公証役場で契約する、法務局に登記される、判断が難しくなる、誰かが家庭裁判所に申し立てる、監督役が選ばれる、ここから始まる、の6段。4段目で線が切れていて、その先の2段が淡く描かれている。止まると、頼んだ相手は銀行でも役所でも何もできないままになる

申し立てられるのは4者。頼れる親族がいなくても、頼んだ相手が申し立てられます

家庭裁判所に監督役を選んでもらう手続きを申し立てられるのは、本人、配偶者、四親等以内の親族、 そして契約で頼んだ相手の4者です。四親等以内の親族には、兄弟姉妹、おい・めい、おじ・おば、いとこまで入ります。 兄や姉の配偶者も入ります。

本人も入っていますが、判断ができるうちしか申し立てられません。 難しくなってからは、残りの3者のどれかが動くことになります。 頼んだ相手(任意後見人)が入っているので、親族がいなくても道はあります。

逆に、頼んだ相手が申し立てなければ、家庭裁判所は監督役を選びません。 親族が近くにいる方なら親族が代わりに申し立てられますが、 いない方は、頼んだ相手が動くかどうかで決まります。

頼めるのは、司法書士、弁護士、行政書士と、任意後見を引き受けているNPOや一般社団法人です。 妻や親族に頼むこともできますし、友人でもかまいません。 家族信託は財産の名義を移す形なので、士業には頼めません。任意後見は頼めます。 違いは家族信託とはで比べています。

全国では、親族以外に頼んだ人が3割います。士業や法人が引き受けています。 残りの7割は親族に頼んでいます。

兄弟や、おい・めいに頼む場合

任意後見人になる人に、住んでいる場所の決まりはありません。 遠くに住んでいる兄でも、頼まれれば申し立てられます。 ただし、遠方だと様子を見に来られないので、 見守りは近くの人か会社に別に頼む形になります。 気づく役と、申し立てる役を分けます。

頼れる家族がいない人の実態調査2026 — 回答者の声

「従弟に相談するつもりです。先週にも会って少し話をしました。」
広島県・60代・男性

自分より年上の相手だと、先に判断が難しくなることがあります。 そのときのために、次に引き受ける人を決めます。 決め方は、その相手ともう1本、任意後見の契約を結んでおくことです。 1本目の相手が動けなくなったら、2本目のほうで申し立ててもらいます。

兄や姉の配偶者に頼むこともできます。血のつながりは条件になりません。

妻や夫に頼む場合は、契約を2本結びます

あなたが妻の任意後見人になり、妻があなたの任意後見人になる形で、契約を2本結びます。 公証役場の手数料は1契約につきかかるので、2本分です。 報酬を払うかどうかは契約で決めるもので、夫婦のあいだなら無報酬にする形がふつうです。 それでも、監督役への報酬は家庭裁判所が決めるので、始まればかかります。

気をつけるのは、妻のほうが先に判断が難しくなった場合です。 あなたが妻の任意後見人になっていれば、あなたが申し立てます。 妻も夫も難しくなったときは、どちらも申し立てられません。 夫婦で結ぶ場合も、次に引き受ける人を別に決めておきます。

頼む相手は、この3つの窓口で探せます

市区町村の地域包括支援センターは、成年後見の相談と紹介がもともとの仕事に入っています。 公証役場は契約を作る場所なので、扱っている専門職を知っています。 司法書士会と弁護士会にも、後見の相談窓口があります。

会ったときに聞くのは、「これまでに任意後見を何件引き受けましたか」 「そのうち、監督役の選任を申し立てたのは何件ですか」の2つです。 契約を作った件数と、実際に申し立てた件数は別です。知りたいのは、申し立てたほうの件数です。

あわせて確かめておくことが3つあります。

聞くことなぜ聞くか
いつ申し立てるか判断の変化をどう見て、どの時点で家庭裁判所に申立書を出すのか
誰が気づくかひとり暮らしだと、変化に気づく人がいない。見守りを別に頼むかどうか
引き継ぐ先先に亡くなったり辞めたりしたときのために、別の人ともう1本結んでおけるか

気づく人を作るために、見守り契約を一緒に結びます

頼んだ相手(任意後見人)が申し立てるといっても、あなたの様子を見ていなければ、 出すときが来たことに気づけません。 契約したきり何年も会わないと、判断が難しくなっても誰も気づきません。

そこで、任意後見の契約と一緒に見守り契約を結ぶ形をとります。 月に一度電話が来て、何か月かに一度は訪ねてきます。そのやり取りの中で、そろそろだと分かった時点で、その相手が家庭裁判所に申し立てます。

頼れる家族がいない人の実態調査2026 — 回答者の声

「施設の母。ちょっと離れた妹夫婦。 なかなか頼れない。 高齢者の特に単身者の生存確認」
岡山県・70代・男性

判断ができるうちから、通帳の管理や支払いを手伝ってほしい場合は、 財産管理の契約を別に結びます。任意後見の契約とセットにする形が多く、これを移行型と呼びます。 全国で結ばれている任意後見の契約は、4分の3が移行型です。

契約月にいくら
見守り1万1,000円
財産管理2万2,000円
任意後見始まってから3万3,000円(それまではかからない)

ひとつの司法書士事務所が公開している報酬表の例です。事務所ごとに違います。

見守りだけなら月1万1,000円。見守りと財産管理を両方頼むと、1万1,000円と2万2,000円を足して月3万3,000円です。 任意後見が始まる前から、この分がかかります。 表のいちばん下の3万3,000円は、任意後見が始まってからの報酬で、これとは別のものです。

始まる前の財産管理の契約を作るとき、任せる範囲は家賃や光熱費の支払いまで、と伝えておきます。 定期預金の解約や家の売却は入れません。 監督役はまだ選ばれていないので、この段階を見ている人がいないためです。

判断が難しくなってきた段階で、通帳の預かりや支払いの手伝いを頼める先には、 市区町村の社会福祉協議会もあります。訪問1回あたり1,200円ほどです。 中身と使える条件は認知症と口座の凍結にあります。

公正証書で作ります。決めるのは、任せることの一覧です

任意後見の契約は、公証役場で公正証書にしないと結べません。 本人の意思と判断がはっきりしているかを、公証人がその場で確かめるためです。 あなたと相手だけで書いた紙に署名しても、任意後見の効力は出ません。

行くのは、あなたと、頼む相手の二人です。先に電話で予約します。公証人が案を送ってくるので、中身を確かめて直したあと、署名のために出向くのが1回。その日は2時間ほどかかります。

持ち物あなたも相手も、印鑑登録証明書と実印。または写真つきの身分証明書と認印。住民票(あなたのぶんは本籍の記載があるもの)

決めるのは、任せることの一覧です。代理権目録といいます。 ここに書いていないことは、頼んだ相手でもできません。 公証役場には標準の一覧が17項目あり、要らないものを削ったり、範囲を狭めたりできます。主なものは次の5つです。

入れておくもの入れないとどうなるか
預貯金の出し入れ銀行の窓口に立てず、介護施設の費用も払えません
介護施設と病院の支払い請求書が来ても、あなたの口座から払えません
介護サービスの契約デイサービスや訪問介護の申し込みができません
住んでいる家の処分介護施設の費用にあてるために売ることができません
市区町村への届け出介護保険や住民票の届け出を代わりにできません

このほかに、保険の手続き、税金の申告、遺産分割の話し合い、訴訟の手続きなどが並びます。 判断ができるうちなら、あとから足せます。契約を結び直すか、足す分を別に結ぶ形です。 難しくなってからはできないので、入れるかどうか迷うものは入れておきます。 大きなお金を動かすときは監督役の同意が要る、と契約に書いておくこともできます。 住んでいる家を売るときや、まとまった定期預金を解約するときを対象にしておけば、そこだけは目が二重になります。

できあがった契約は、公証人が法務局に登記します。自分で登記所へ行く必要はありません。 登記が済むまで2週間ほどかかります。

自分で作れば2万円ほど。士業に頼むと7万円から17万円です

契約のときにかかるお金と、始まってから毎年かかるお金は別です。 元気なうちは、公証役場の分だけで済みます。

契約のとき
公正証書1契約につき13,000円
収入印紙2,600円
登記の手数料1,600円
書留郵便と証明書合わせて3,000円ほど

合わせて2万円ほどです。中身の相談から公証役場とのやり取りまで士業に頼むと、 5万円から15万円が別にかかり、合計で7万円から17万円になります。

頼む相手を自分で決めて、任せることの一覧も自分で書いて持ち込めば、 公証役場の2万円ほどで済みます。中身を決めるのが難しければ、 案づくりだけを司法書士や行政書士に頼むこともできます。

家庭裁判所に申し立てるときは、収入印紙800円と、登記の手数料1,400円、それに郵便切手です。 あわせて、医師の診断書が要ります。作成料は5,000円から1万円ほどで、医療機関によって違います。 申し立てを士業に頼むと、そこで11万円ほどが別にかかります。 全部を自分でやれば、契約のとき2万円ほどと、申し立てのとき1万円ほど。 両方とも士業に頼むと、18万円から28万円ほどになります。

動き出してからは、毎年かかります。 頼んだ相手(任意後見人)への報酬が月3万円から5万円。これは契約で決めた額です。 これに監督役への報酬が月1万円から3万円加わります。 こちらは管理する財産の額を見て家庭裁判所が決めるので、契約では変えられません。

合わせて月4万円から8万円。年に48万円から96万円が、亡くなるまで続きます。 友人に無報酬で引き受けてもらう場合でも、監督役の分はかかります。

払える見込みがあるかどうかは、契約の前に確かめておくところです。 年金だけで暮らしている方だと、月4万円から8万円は重くなります。 家庭裁判所は管理する財産の額で監督役の報酬を決めていて、5,000万円が一つの区切りです。 それ以下なら月1万円から2万円のほうに寄ります。 頼んだ相手を親族や友人にして無報酬にしても、監督役の分の月1万円から3万円は残ります。

市区町村の助成は、判断ができなくなってから家庭裁判所が人を選ぶ法定後見だけを対象にしているところが多く、 任意後見の監督役の報酬まで出るかは市区町村で違います。 使えるかどうかは、福祉の担当課で確認してみてください。

払い方は毎月ではありません。監督役が年に1回、家庭裁判所に報酬を請求して、 認められた額があなたの財産からまとめて支払われます。 頼んだ相手への報酬も、同じ時期にまとめて払う形が多くなります。

契約しても、動き出しているのは100件のうち3件です

いま生きている人の契約で、監督役が選ばれているのは3%ほどです。亡くなるまでで見ると、3人に1人は使われています。 言いかえると、契約した人の3人に2人は、一度も使わないまま亡くなっています。

任意後見の契約数と、実際に動き出した件数の開きを2本の棒で示した図。左は10年前、右はいまで、契約の棒は2倍に伸びているのに、動き出した件数の棒はほとんど伸びていない。増えたぶんがそのまま眠りに回っていることを示している

契約そのものは増えています。この10年で、結ばれる数はおよそ2倍になりました。 いっぽうで、家庭裁判所への申立ては横ばいのままです。増えたぶんが、そのまま眠りに回っています。

眠る理由ははっきりしています。誰かが家庭裁判所に申し立てないと、動き出さないからです。 契約した本人は、そのときには判断が難しくなっています。自分では申し立てられません。

契約するときの年齢は、平均で80歳。いちばん多いのは83歳です。 判断ができるうちでなければ結べないので、この80歳は遅い側の数字です。 60代・70代で結ぶ人もいます。困ってから駆け込むと、元気なうちの期間が残りません。

眠ったまま判断が難しくなると、行き先は法定後見です。成年後見ともいいます。 判断ができなくなってから家庭裁判所が人を選ぶ形で、こちらでは選べません。 自分で選ぶために結んだのに、家庭裁判所に選んでもらう側へ戻ります。

眠らせないためには、頼む相手を決めるときに確かめる3つを、契約と同じときに話して決めます。

任意後見を結んでも、頼めないこと

入院や介護施設に入る契約は、頼んだ相手(任意後見人)ができます。できないのは、手術を受けるかどうかの同意です。 体にメスを入れるかどうかの判断は、契約に署名するのとは別のものとして扱われます。 そのときは、病院が本人に説明して意思を確かめます。 それが難しい場合は、兄弟や、おい・めいまで探して連絡が行きます。誰もいなければ、病院の中で話し合って決めます。

介護保険のサービスや、家事を頼む会社への申し込みも、頼んだ相手ができます。 代金を払うところまでが役目です。 掃除、買い物、食事の用意、通院の付き添いといった手を動かす部分は、そのサービスの側がします。

入院するときの保証人の欄は、任意後見とは別に頼むことになります。 病院が求めているのは、入院代の支払いを引き受ける人と、亡くなったときに引き取る人だからです。 同じ相手に両方を頼めることもあるので、契約のときに聞いてみてください。 引き受け手がいないときの進み方は入院の保証人がいないにまとめています。

亡くなったあとの手続きも別です。任意後見は、亡くなった時点で終わります。 葬儀の手配、部屋の片づけ、健康保険や年金の届け出は、死後事務委任の契約で頼む形です。 こちらも同じ相手に両方を頼めます。頼み方は死後事務委任契約に書いています。

判断が難しくなったあとに結んでしまった契約は、取り消せる場合と、取り消せない場合があります。 取り消しを求めるのは、頼んだ相手(任意後見人)です。 訪問販売で高額なものを買わされた場合なら、クーリング・オフや消費者契約法の期限に間に合えば取り消せます。 期限を過ぎたものは、法定後見なら取り消せますが、任意後見にはその力がありません。

よく聞かれること

監督役は、どのくらい見てくれるのですか

年に1回、頼んだ相手から報告を受けて、通帳や領収書を確かめ、家庭裁判所に報告します。毎日見ているわけではありません。

頼んだ相手が先に亡くなったら

契約はそこで終わります。代わりの人に自動で移ることはありません。判断がまだできる状態なら、別の相手と結び直します。難しくなっていれば、家庭裁判所に申し立てて法定後見に移ることになります。二番目の相手を決めておきたい場合は、その相手とも別に任意後見の契約を結んでおきます。

認知症と診断されてからでは、もう結べませんか

診断そのものではなく、契約の中身を理解できるかどうかで決まります。誰に何を任せるかを自分の言葉で説明できるなら結べます。公証人が本人と話して確かめます。進んでいて説明が難しくなっていれば断られ、法定後見に進むことになります。

眠ったまま判断が難しくなったら、どう移るのですか

任意後見の契約は残ったままですが、監督役が選ばれていないので使えません。誰かが家庭裁判所に法定後見の申し立てをして、そちらへ移ります。申し立てるのは、本人、配偶者、四親等以内の親族、それに市区町村長です。身寄りがない方については、介護施設や病院、地域包括支援センターから市区町村へ話が上がり、市区町村長が申し立てる流れになります。全国では、申し立てる人の4分の1が市区町村長です。

報酬を払うお金がなくなったら

監督役の報酬は、財産の額を見て家庭裁判所が決めるので、財産が少なければその分低くなります。生活保護を受けている場合や、それに近い状態の場合は、市区町村が報酬を助成する制度があります。対象や条件は市区町村ごとに違います。

契約したことは、家族や周りに知られますか

登記されますが、誰でも見られるものではありません。証明書を取れるのは、本人、頼んだ相手、配偶者、四親等以内の親族などに限られています。近所や勤め先に伝わることはありません。